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漫画ゆっくりかいてます
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オカルトチックな話だけど、人の想いが込められたものには魂が宿ると思ってる。
その辺の石ころなど、人の想いがほとんど注入されてない物は生きていないが
同じ物でも愛着を持たれていればそれは生命だ。
人間もそうで、人の想いが込められるほど生きてくるものじゃないかなと思う。
良くも悪くもね。
家が全焼した。
 
僕は親元を離れ、都内の大学に通うため一人暮らしをしているのだが
基本的に近場の本屋とスーパーを何軒か巡るだけの毎日を過ごしている。
秋口と言っても僕にとっては体に突き刺さるような日差しであるため、
自分の切れた靴紐と、破れた靴底が交互に入れ替わる様をじっと見ているところだった。
けたたましいサイレン、人、聞きなれない音に顔を上げると
そこには僕の住んでいたであろう、アパートのような形をしたものがあった。
 
僕には体の芯から心の高鳴りが聞こえていた。
教科書も、お金も、服も全部無くなった。
今夜はどこで眠ろうか。パンの耳はタダでもらえるものなのか。
これからの生活はどうなるのか。
僕はワクワクした。自分を縛っていた何かが全て解けたような気分だった。
それは拠り所が無い恐怖を紛らわすためか、危機感を現実的に感じたからなのか定かではないが、
この時の僕は確かに幸せだった。
 
先ほど、仮設住宅が用意されている旨と、火災保険がどっさり降りたことが伝えられた。
生活は十分保障されるという。
僕は肩を落とした。全身にみなぎっていた何かが抜けていくような気分だった。
それは果たして安堵の気持ちだけだったろうか。
 
 
気が付くとやってしまっていた。
 
 
かかとにへこむような感触を覚えたので、あばら骨が折れたのかもしれない。
彼女の小さく、搾り出すようなうめき声は次第に醜く濁った叫びに変わった。
 
 
 
剥げたアスファルトから覗く黒ずんだ砂利のような声が部屋中を巡るので、
僕はいつだったか、中原街道沿いの高架橋下に倒れこんだ時に
赤土にまみれた看板、ディーゼルの排気ガス、果てしなく残響するホワイトノイズの中で
こんな世界は嘘だと思ったことを思い出した。
 
 
 
彼女は泣き出していた。
とめどなく溢れる痛みと、僕に胸を踏み潰された事実がそんなに彼女の感情を揺らしているのだろうか?
そう思うと僕は大変なことをした気がしたので、大丈夫か、ごめんね、ごめんね、と言い
汚い土手のように変色している胸をさすった。
 
 
すると彼女は自分の痛みに夢中で、僕の優しさに対し何の興味も示さなかったので
僕は、薄目を開けて僕の手を見つめる彼女の片眼にひざを入れた。
黄色がかった透明な液体が壁を反射し、泥のような血と仲良く床に数滴、それはしたたった。
今度はすりガラスを引っかいたような声を、大そうなボリュームで執拗に上げ始めるので
ホラー漫画か何かに出てきそうだなあとか、彼女はサンプラーか何かじゃなかろうかとか、
少し吹き出してしまいながら携帯で救急車を呼んだ。
 
 
 
ホテルの入り口前で鳴る甲高いサイレンの音が、夜の街中にそびえるコンクリートに乱反射するので、
僕は、何だかもう全てがどうでもよくなった。





   





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